

宮脇賣扇庵――京の美意識を扇に託してきた老舗
京都の町には、季節とともに育まれてきた道具や所作が数多く残されています。その中でも、ひときわ象徴的な存在として語られてきたのが「扇子」です。
その京扇子の世界で、長い時間をかけて信頼を積み重ねてきたのが、宮脇賣扇庵です。
創業は江戸時代。以来、宮脇賣扇庵は扇子を単なる涼をとる道具ではなく、礼節や美意識を表す品として扱い続けてきた老舗として知られてきました。
京扇子という文化――用と美が重なる場所
京扇子は、細く割った竹骨と和紙を組み合わせ、分業によって完成する工芸品です。
骨づくり、紙貼り、絵付け、仕上げ。それぞれの工程に専門の職人が関わり、全体としてひとつの調和を目指す点に、この文化の特徴があります。
宮脇賣扇庵の扇子からは、派手さよりも「使われること」を前提とした設計思想が感じられます。開閉のしやすさ、手に持ったときの収まり、閉じた姿の端正さ。その一つひとつが、長年の経験によって整えられてきたものなのでしょう。
贈答と扇子――言葉の代わりに手渡すもの
扇子は、古くから贈答品として用いられてきました。
末広がりの形は縁起が良いとされ、改まった場や節目の贈り物としても意味を持つ存在です。宮脇賣扇庵の扇子は、過度な装飾に頼らず、持つ人や贈る場面を選ばない佇まいによって、こうした用途に応えてきたと考えられます。
言葉を多く添えずとも、由来や背景が自然と伝わる。
その控えめな説得力こそが、長く選ばれてきた理由のひとつなのかもしれません。
季節を携えるという感覚
扇子は、季節を身につける道具でもあります。
夏の盛りに涼を届けるだけでなく、装いや所作の一部として、季節感を静かに示す役割を果たしてきました。
宮脇賣扇庵の品々には、色柄や素材選びにおいても、四季との距離感が意識されているように感じられます。強く主張するのではなく、「分かる人に伝わる」程度に留める。その姿勢は、京都の美意識そのものと重なります。
おわりに――所作に宿る、日本の品格
宮脇賣扇庵の扇子は、使い方を声高に主張する道具ではありません。
しかし、手に取った瞬間や、ふと開いたときの所作の中に、日本らしい品格を自然と立ち上がらせてくれる存在です。
節目の贈り物に、あるいは自らの装いを整える一本として。
意味のある道具を選びたいとき、宮脇賣扇庵の名は、静かに思い浮かぶ選択肢であり続けているように感じられます。
画像出典
・宮脇賣扇庵 公式サイト
https://baisenan.co.jp/
(公式公開情報より)

