【皇室御用達】伊豆榮 鰻

皇室御用達
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江戸の味を今に伝える鰻の名店、伊豆榮

東京・上野の地で、鰻料理の老舗としてその名を知られてきた「伊豆榮」。創業は江戸後期・享和年間と伝えられ、以来二百年以上にわたり、鰻という日本料理の中でも特別な存在と向き合い続けてきました。華美な演出を前に出すことなく、鰻そのものの味わいと、変わらぬ仕事によって評価を積み重ねてきた一軒です。

上野という文化と賑わいの交差点にありながら、伊豆榮の佇まいには、どこか時の流れが緩やかになるような落ち着きがあります。それは、長い年月の中で育まれてきた「店としての品格」が、自然と空間に滲み出ているからなのかもしれません。


鰻という食材に向き合う、慎重で誠実な姿勢

鰻は、仕入れや扱いによって味わいが大きく左右される繊細な食材とされています。伊豆榮では、産地や状態を見極めながら、その時々の鰻に合わせた仕事を重ねてきたといわれています。一定の型に当てはめるのではなく、素材の個性を読み取ることを優先する姿勢は、老舗ならではの考え方といえるでしょう。

捌き、串打ち、焼き、蒸し——一連の工程はいずれも、経験と感覚に支えられたものです。特に江戸前鰻の特徴とされる「蒸し」の工程は、脂を落としつつ身をふっくらと仕上げるための重要な仕事であり、伊豆榮の鰻が重たさを感じさせにくい味わいと評されてきた理由の一端とも考えられます。


代々受け継がれてきた、控えめなタレの存在

鰻料理において、タレは店の個性を最も象徴する要素のひとつです。伊豆榮のタレは、甘さや濃さを前面に出すタイプというよりも、鰻の旨みを引き立てるための脇役として設えられている印象があります。

代々継ぎ足されてきたとされるタレは、主張しすぎず、しかし確かな輪郭をもって鰻の味を支える存在です。この抑制の効いた味づくりが、世代を超えて受け入れられてきた理由であり、格式ある席でも選ばれてきた背景につながっているように感じられます。


「特別な日」に寄り添ってきた鰻重

伊豆榮の鰻は、日常の食事というよりも、人生の節目や大切な会食の場で選ばれてきた歴史を持ちます。祝いの席、もてなしの場、あるいは自らを労わる時間。そのいずれにおいても、過度に華やかすぎず、しかし確かな満足感を残す存在として、鰻重が供されてきました。

重箱の蓋を開けた瞬間に立ちのぼる香り、箸を入れたときのやわらかさ。そうした一つひとつの所作が、食事の時間そのものを丁寧なものへと導いてくれます。伊豆榮の鰻は、味覚だけでなく、時間の質を整える料理ともいえるでしょう。


贈答・もてなしにおける「伊豆榮」という選択

鰻は古くから滋養のある食として重んじられ、贈答やもてなしの品としても扱われてきました。その中で伊豆榮は、「どこを選ぶか」という問いに対して、安心して名前を挙げられる存在として位置づけられてきた店です。

格式を重んじる相手であっても、流行に敏感な世代であっても、大きな違和感なく受け入れられる。その懐の深さは、長年にわたり積み重ねてきた信頼の証といえるでしょう。


まとめ ― 鰻という日本料理の王道を体現する店

伊豆榮は、革新性を競う店ではありません。しかし、変わらぬ仕事を続けることの難しさと尊さを、鰻という料理を通して示してきた存在です。江戸から続く味と姿勢は、単なる伝統ではなく、今もなお選ばれ続ける理由として息づいています。

鰻を選ぶ意味を考えたとき、伊豆榮はきわめて自然な選択肢のひとつとなるでしょう。特別な一日を、静かに、しかし確かに支えてくれる——そんな一軒です。

画像出典:伊豆榮公式サイト・飲食店紹介ページ