雨の日の所作を美しく整える傘 — 前原光榮商店【傘】


傘という日用品に、ここまで静かな敬意を集めてきた店は多くありません。前原光榮商店は、昭和初期の創業以来、一本一本の洋傘と向き合い続けてきた老舗です。
単なる雨具ではなく、持つ人の佇まいや所作までを整える道具として傘を捉える。その姿勢が、長く選ばれてきた理由の根底にあるように感じられます。
手仕事を前提とした傘づくり
前原光榮商店の傘づくりは、今も職人の手による工程を中心に行われています。骨の組み立て、生地張り、持ち手の仕上げ。どれも機械だけでは完結しない作業であり、長年培われた感覚が求められます。
とくに開閉の滑らかさや、差したときの安定感には、見えない部分への配慮が行き届いている印象があります。
素材選びに現れる、控えめな美意識
生地には、しなやかで張りのある布が選ばれ、色合いも落ち着いたものが中心です。派手さはありませんが、使うほどに品の良さが伝わってくる。
持ち手には天然木が用いられることが多く、一本ごとに異なる木目や表情が、そのまま個性として活かされています。経年による変化を前提にしている点も、工業製品とは異なる魅力でしょう。
形に表れる、道具としての完成度
前原光榮商店の傘は、閉じた姿も美しいと感じさせます。布のまとまり方、石突きから持ち手までの直線性。
使っていない時間にも破綻がないことは、日用品として非常に重要な要素です。玄関先や職場で目に入ったとき、その佇まいが空間を乱さない。その点も、長く使われてきた理由の一つでしょう。
流行と距離を保つという選択
ファッション性の高い傘が次々と登場する中で、前原光榮商店は流行に寄り添いすぎることをしてきませんでした。
形や仕様は大きく変えず、完成度を維持することに重きを置く。その結果として生まれた傘は、年齢や装いを問わず、自然に手に取れる存在となっています。
使い続けることで育つ一本
前原光榮商店の傘は、購入した瞬間が完成ではありません。雨の日を重ねるごとに、手に馴染み、扱い方にも自然と気遣いが生まれます。
乱暴に扱えない分、道具への向き合い方そのものが変わっていく。その体験こそが、この傘の本質的な価値なのかもしれません。
今、良い傘を選ぶということ
消耗品として傘を考える時代は、少しずつ変わりつつあります。長く使える一本を持つことで、雨の日の気分や所作までが整っていく。
前原光榮商店の傘は、そうした変化を静かに促してくれる存在です。
日常の中で確かな道具を選びたいとき、この傘は、過不足のない答えを差し出してくれるでしょう。
画像出典
・前原光榮商店 公式オンラインショップ
・公開されている商品・店舗紹介用素材


